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人的資本開示の「ほぼ同文」は、前年の文章の使い回しなのか:DOCI 2026の年次更新から

人的資本開示の年次調査「DOCI 2026」では、TOPIX100の有価証券報告書の人的資本の記載が、FY2024→25に75%の企業で前年と「ほぼ同文」でした。ただ、本稿で文の単位に比べ直すと、その74社でも前年とほぼ同じ文(文字の並びが9割以上一致する文)が本文に占める割合は中央値で約6割でした。本稿では、この数字の読み方と、自社の年次更新を見直す手順を示します。類似度は機械計算の値、因果の評価はAI支援の一次コーディングによる暫定値です。

DOCI 2026の年次更新の分析は、何を比べたのか

各社の人的資本の記載を前年の自社の文章と比べ、文面の似かたと因果の深さ(D4)の帯の動きで、更新を4つの型に分けています。

DOCI 2026は、株式会社DroRと臨床組織科学研究会が2026年7月5日に公開した年次調査です。TOPIX100各社の有価証券報告書3期分(FY2023〜2025、299書類・296テキスト)の人的資本の記載を、施策の記述(D1)、方針の表明(D2)、指標との連動(D3)、構造・因果の記述(D4)の4つの観点で、それぞれ0〜3の帯に分けて評価しました。年次更新の分析では、このうちD4の帯と、前年の自社の文章との類似度を組み合わせています(図表25・28)。

類似度は、文章を3文字ずつの並び(文字3-gram)に切り分け、どの並びがどれだけ出てくるかの重なりをコサイン類似度(0〜1)で測ったものです。レポートは0.90以上を「ほぼ同文」としています。この0.90の線は暫定のもので、今後の検証で見直す可能性があります。これにD4の帯が前年から動いたかどうかを組み合わせ、次の表の4つの型に分けました。類似度は文章から機械的に計算した値で、D4の帯はAI支援の一次コーディングによる暫定値です。

レポートによると、ほぼ同文の更新はFY2023→24の55%からFY2024→25の75%(99社中74社)に増え、文面も帯も変わらない「静的」は34%から45%になりました。3期のテキストがそろう96社のうち、2回の更新のどちらもほぼ同文で、帯も3期変わらなかった企業は17社で、そのうち9社は帯0〜1のままでした(図表25)。レポートはこれを、開示文の再利用が常態化しつつあると読んでいます。

型定義(レポートの図表28)FY2023→24(97社)FY2024→25(99社)
静的(前年踏襲)類似度0.90以上で、D4の帯が変わらない33社45社
表層改訂類似度0.90未満(書き換えた)で、帯が変わらない20社11社
深化帯が上がった(文面がほぼ同じまま上がった企業を含む)31社28社
下降・その他帯が下がった、など13社15社

「ほぼ同文」は、前年の文章をそのまま使ったということなのか

そうとは限りません。本稿の計算では、ほぼ同文の74社でも、前年とほぼ同じ文が本文に占める割合は中央値で約6割でした。

文字3-gramの類似度は、どの3文字の並びがどれだけ出てくるかの重なりを見る値で、言葉づかいの近さに反応します。レポートも図表25で「語彙がほぼ同一」と説明しています。同じ会社が同じ欄を書けば、社名や制度の名前、決まった言い回しが毎年そろって出てくるため、値は高くなりやすくなります。FY2025では、異なる会社どうしの組み合わせでも平均0.544でした(図表26)。

そこで本稿では、DOCIの集計に使った各社の本文テキストで、文の単位でも比べました。今年の本文を「。」で区切って文に分け、それぞれの文について、前年の本文に同じ文があるか、文字の並びが9割以上一致する文(「ほか」を「他」に直した、といった小さな修正を含む)があるかを調べ、そうした文の字数が今年の本文に占める割合を計算しました。10字未満の断片は数えていません。

FY2024→25にほぼ同文とされた74社では、一字一句同じ文の割合は中央値36%、小さな修正を含めても中央値63%(中ほどの半数は49〜77%)でした。前年とほぼ同じ文が9割以上を占めた企業は4社で、半分に届かない企業も22社ありました。書き換えたとされた25社では、同じ数え方(小さな修正を含む)で中央値31%です。中央値で見ると、ほぼ同文の更新は、前年の文章を土台に、本文の4割弱を書き足したり書き換えたりした更新と読めます。

この計算は機械的な区切りによるものです。表や箇条書きのように「。」で終わらない部分はひとまとまりで比べるため、数値をいくつか更新しただけで「ほぼ同じ文」から外れることがあり、割合は低めに出る方向に働きえます。また、文の比較も類似度と同じく文章どうしの比較で、施策や組織の実態が変わったかどうかは示しません。

見方数え方FY2024→25の結果
文書全体の類似度(レポート)文字3-gramのコサイン類似度が0.90以上99社中74社(75%)
前年とほぼ同じ文が半分以上(本稿の計算)文字の並びが9割以上一致する文の字数が、本文の50%以上99社中52社
前年とほぼ同じ文が8割以上(本稿の計算)同じ割合が80%以上99社中13社
前年とほぼ同じ文が9割以上(本稿の計算)同じ割合が90%以上99社中4社

「ほぼ同文」の割合は、線の置き方でどれだけ変わるのか

大きく変わります。FY2024→25は、類似度の線が0.85なら88%、0.90なら75%、0.95なら38%です。増えた向きはどの線でも同じでした。

類似度のどこに線を引くかは、分析の約束事です。レポートの0.90の線も暫定のもので、今後の検証で見直す可能性があります。本稿で、レポートと同じ類似度の値を使い、線だけを動かして数え直すと、次の表のとおりでした。どの線でもFY2023→24よりFY2024→25の方が多く、前年の文面に近い更新が増えたという向きは、線の置き方によりません。一方、「75%」「4分の3」という水準は0.90の線に結びついた値で、引用するときは線と一緒に書く必要があります。

「静的」の増え方は、線の置き方に左右されます。線を0.85にすると、静的はFY2023→24の46%からFY2024→25の49%で、ほとんど増えません。0.95にすると7%から25%に増えます。

類似度の線FY2023→24(97社)FY2024→25(99社)静的の割合(FY2023→24、FY2024→25)
0.85以上79%(77社)88%(87社)46%、49%
0.90以上(レポートの線)55%(53社)75%(74社)34%、45%
0.95以上16%(16社)38%(38社)7%、25%

「静的」が34%から45%に増えたことは、どこまで言えるのか

本稿の計算では、ほぼ同文の増加は偶然では説明しにくい一方、文面も帯も変わらない「静的」の増加は偶然と見分けられません。

2回の更新を同じ企業どうしで比べるため、3期のテキストがそろう96社に絞りました。ほぼ同文の企業は、1回目(FY2023→24)の52社から2回目(FY2024→25)の71社に増えました。1回目だけほぼ同文だった企業は10社、2回目だけの企業は29社です。この偏りは、偶然では説明しにくい大きさでした(同じ企業の前後を比べるマクネマー検定・正確な計算でp値約0.003)。ただ、FY2023の本文は系統的に短く、前年に対する今年の本文の字数は、全社の中央値でFY2023→24が1.21倍、FY2024→25が1.09倍だったため(本稿の計算)、この増加には年度ごとの文量の差が影響している可能性があります。

静的は33社から44社に増えましたが、1回目だけ静的だった企業が16社、2回目だけの企業が27社と入れ替わりが大きく、p値は約0.13でした。静的は、文面がほぼ同じで、しかもD4の帯が動かないことを条件にしています。帯の上下には判定の揺れが含まれうるため、静的の数は、文面だけで数えた数より揺れやすくなります。11ポイントの増加はレポートが観察したとおりの値ですが、この社数では、偶然の入れ替わりと見分けられる大きさではありません。これは、増えていないという意味でもありません。

確かめたこと(3期そろう96社)1回目→2回目本稿の計算読み方
ほぼ同文(類似度0.90以上)の企業52社→71社マクネマー検定でp値約0.003偶然では説明しにくい増加
静的(ほぼ同文で帯も不変)の企業33社→44社マクネマー検定でp値約0.13偶然の入れ替わりと見分けられない

「ほぼ同文」なのに評価が動いた29社は、何を示しているのか

評価の揺れが含まれうることです。類似度0.90以上でも約4割で帯が動き、前年とほぼ同じ文が8割以上の企業でも動きました(本稿の計算)。

レポートは、FY2024→25にほぼ同文だった74社のうち45社が静的で、残る29社はほぼ同文のまま帯が動いた(上がった17社、下がったなど12社)としています(図表28)。帯の上下にコーダー間のばらつきを含む揺らぎがあることも、レポートは述べています(p.22)。

本稿で、帯が動いた割合を比べると、ほぼ同文の企業では74社中29社(39%)、書き換えた企業では25社中14社(56%)でした。この差は、フィッシャーの正確検定(両側)でp値約0.17で、偶然でも起こりうる大きさです。FY2023→24も38%と55%(p値約0.11)でした。2年とも書き換えた企業の方が高い向きで、社数が少ないため、差がないとも言えません。前年とほぼ同じ文が本文の8割以上を占めた13社でも、5社で帯が動いていました。ほぼ同文の企業のうち、帯が動いた企業と動かなかった企業で、前年とほぼ同じ文の割合(中央値63%と62%)に目立つ差は見られませんでした(検定はしていません)。

類似度が0.90以上でも、中央値で見ると本文の4割弱は書き足しや書き換えと読めるため、因果の書き方が変わる余地はあります。ただ、前年とほぼ同じ文が8割以上の企業でも帯が動いていること、ほぼ同じ文の割合が帯の動いた企業と動かなかった企業で目立って違わないことは、帯の上下に判定の揺れが含まれるという、レポート自身の注意と整合します。書き足された部分に因果の説明が入ったのか、判定の揺れなのかは、今のデータでは分けられません。人による独立の評定と一致度(κ)の報告が、これを確かめる場になります。それまでは、個々の企業の帯の上下や「深化」の社数を、その企業の書き方が変わった証拠として読まないことをおすすめします。

同業種どうしの開示が似ているのは、偶然の範囲なのか

本稿の計算では、偶然では生じにくい差でした。ただ、差は小さく、なぜ似るのかはこの計算からは分かりません。

レポートは、各年度の全社の組み合わせ(約4,700〜4,950組)で類似度を計算し、平均はFY2023の0.498からFY2024の0.530、FY2025の0.544に上がり、FY2025では同じ業種どうしの組み合わせの平均(0.566)が、異なる業種どうし(0.543)より高いとしています(図表26)。

本稿で、業種ごとの社数は変えずに、各社の業種の名札をくじ引きのように付け替え、同業種と異業種の平均の差を計算し直すことを2万回行いました。FY2025の差(0.023)以上になったのは約0.6%(p値約0.006)でした。FY2023(p値約0.02)とFY2024(p値約0.015)でも、同じ向きの差は偶然では生じにくい大きさでした。FY2025では、2社以上が属する19業種のうち14業種で業種内の平均が異業種の平均を上回り、どの1業種を除いても差は0.02〜0.03ほど残るため、一部の業種だけによる差でもありません。

一方、差の大きさは0.023で、全社の平均がFY2023からFY2025に上がった幅(0.046)の半分ほどです。また、文字3-gramの類似度は言葉の重なりを見るため、同じ業界で使う事業の言葉や制度の名前が共通しているだけでも高くなります。レポートは、同業他社の開示を参照し合う構図と整合的としながら、模倣、同じ支援者、規制の文言の共有などの要因は特定しないとしています。本稿の計算も、似ていることが偶然ではないところまでを示すもので、互いにまねているかどうかは示していません。同業と言い回しが似ていることをどう受け止めるかは、DOCI 2026の業種別の結果を読み解いた解説記事でも取り上げています。

自社の年次更新を見直すときは、何から始めればよいのか

前年から書き換えなかった文を抜き出し、その中の施策がこの1年で組織に何を生んだかを、施策の担当者に確かめるところから始めます。

前年と同じ文を残すこと自体は、問題ではありません。指標の定義や、変えていない方針を同じ言葉で書き続けることは、年をまたいだ比較をしやすくします。DOCIも、文章を再利用したかどうかで採点してはいません。見直したいのは、施策の結果や因果を語る文が、この1年に組織で起きたことを確かめないまま、前年のまま残っている場合です。次の順で進めると、残す文と書き直す文を分けられます。

  • 前年と今年の人的資本の記載を、文書の比較機能などで並べ、今年書き換えなかった文に印をつける。
  • 印のついた文のうち、施策と成果を結ぶ文(「〜ことで」「〜ため」を含む文や、施策の効果を述べる文)を選ぶ。
  • 選んだ文の施策について、この1年で誰の何が変わったかを、施策の担当者に確かめる。答えは、記憶や印象ではなく、議事録や現場での聞き取りなど、後から社内で確かめられる形で集める。
  • 変化が確かめられたら、その途中の変化を書き足す。変わっていなければ、前年の文のままでよいか、施策の進め方を見直すかを社内で決める。
  • 書き直した箇所を、DOCI確認シートの観点4(構造・因果の記述)の目安で読み直す。シートで付けた帯は社内の点検用で、DOCIの判定ではない。

年次更新の結果を引用するとき、何に気をつけるか

類似度の線、帯が暫定値であること、文章の比較では組織の実態は分からないことを、数字と一緒に書いてください。

年次更新の結果を社内資料や記事で使うときに、添えておきたい点は次のとおりです。

  • 類似度は文章から機械的に計算した値で、「ほぼ同文」は類似度0.90以上を指します。この0.90の線は暫定のもので、今後の検証で見直す可能性があります。割合は線の置き方で大きく変わるため、線と一緒に引用してください。
  • 「ほぼ同文」は言葉づかいがほぼ同じという意味で、前年の文章をそのまま写したという意味ではありません。
  • D4の帯は、AI支援の一次コーディングによる暫定値です(本文テキストの一次判定はAIで、企業名・年度は伏せていません)。人による独立評定と一致度(κ)の報告をもって確定する予定で、「静的」「深化」などの型の社数も、それに合わせて変わりえます。
  • 文章が前年と似ていることは、施策や組織の実態が変わっていないことを意味しません。DOCIは開示の書き方を記述した調査で、因果関係や企業の優劣を主張しません。
  • 個社ごとの類似度や判定データは公表していません。3年間ほぼ同文で帯も変わらなかった17社の名前も公表していません。
  • 文の単位の比較、線を動かした数え直し、マクネマー検定、フィッシャーの正確検定、業種の名札の付け替えの計算は、レポートにはなく本稿で行ったものです。いずれも、DOCIの凍結したプロトコル(事前に固定した集計の手順)の外で行った補足の集計です。
  • レポートPDFの方法の記述のうち、企業名・年度を伏せて評価したとする箇所は改訂予定です。この点は、公開ページの記述が最新です。

よくある質問

「ほぼ同文」の開示は、前年の文章をコピーしたものですか。
そうとは限りません。DOCI 2026の「ほぼ同文」は、文字3-gramのコサイン類似度が0.90以上の更新で、言葉づかいの近さを測っています。本稿で文の単位に比べ直すと、FY2024→25にほぼ同文とされた74社でも、前年とほぼ同じ文(文字の並びが9割以上一致)が本文に占める割合は中央値で約6割で、9割以上を占めた企業は4社でした。中央値で見ると、前年の文章を土台に、本文の4割弱を書き足したり書き換えたりした更新と読めます。
文字3-gramのコサイン類似度とは、何を測っているのですか。
文章を3文字ずつの並びに切り分け、どの並びがどれだけ出てくるかの重なりを0〜1で測る値です。語順や段落の入れ替えには反応しにくく、同じ言葉が同じくらい出てくれば高くなります。そのため、同じ会社の文章どうしでは高く出やすく、DOCI 2026のFY2025では、異なる会社どうしの組み合わせでも平均0.544でした。文章をそのまま写したかどうかを直接測る値ではありません。
「ほぼ同文75%」という数字は、そのまま引用してよいですか。
引用するときは、類似度0.90以上という線と一緒に書いてください。この線は暫定のもので、今後の検証で見直す可能性があります。本稿で線だけを動かして数え直すと、FY2024→25のほぼ同文の割合は、0.85以上なら88%、0.95以上なら38%でした。どの線でもFY2023→24より増えており、増えた向きは線の置き方によりませんが、「4分の3」という水準は0.90の線に結びついた値です。言葉づかいの近さを測った値で、文章を使い回した割合ではないことも添えると、誤読を防げます。
前年と同じ文章を使い続けるのは、よくないことですか。
それだけで悪いとは言えません。指標の定義や、変えていない方針を同じ言葉で書き続けることは、年をまたいだ比較をしやすくします。DOCIも、文章を再利用したかどうかで採点してはいません。見直したいのは、施策の結果や因果を語る文が、この1年に組織で起きたことを確かめないまま前年のまま残っている場合です。前年から書き換えなかった文のうち施策と成果を結ぶ文を選び、施策の担当者に今年の変化を確かめるところから始めてください。
「静的更新」が45%に増えたのは、開示が停滞しているということですか。
そこまでは言えません。静的は、文面がほぼ同じで、D4の帯(暫定値)も変わらない更新です。本稿で3期のテキストがそろう96社に絞り、同じ企業の前後を比べると、静的の増加(33社から44社)は入れ替わりが大きく、p値約0.13で偶然と見分けられませんでした。文面がほぼ同じ更新の増加(52社から71社、p値約0.003)は偶然では説明しにくいものの、開示の文章が似ていることは、施策や組織が止まっていることを示しません。
文面がほぼ同じなのに、因果の評価が上がったり下がったりしたのはなぜですか。
評価の揺れが含まれうるためです。D4の帯はAI支援の一次コーディングによる暫定値で、レポートも、帯の上下にはコーダー間のばらつきを含む揺らぎがあるとしています。本稿の計算では、FY2024→25に帯が動いた割合は、ほぼ同文の企業で39%、書き換えた企業で56%で、2年とも書き換えた企業の方が高い向きでしたが、この社数では偶然と見分けられませんでした(p値約0.17)。書き足された部分に因果の説明が入った場合もありえ、どちらかは人による独立の評定で確かめます。
3年間ほぼ同文で帯も変わらなかった17社は、どの会社ですか。
DOCIは個社ごとの類似度や判定データを公表しておらず、17社の名前も公表していません。17社は、3期のテキストがそろう96社のうち、2回の更新のどちらでも類似度0.90以上で、D4の帯(暫定値)も3期変わらなかった企業です。自社がこれに近いかを知りたい場合は、前年と今年の人的資本の記載を並べ、今年書き換えなかった文がどれだけあるかを確かめてください。
同業他社の開示と似ているのは、まねをしているということですか。
そうとは言えません。DOCI 2026のFY2025では、同業種どうしの類似度の平均(0.566)が異業種どうし(0.543)より高く、本稿の計算では、業種の名札をくじ引きで付け替えてもこの差以上になるのは約0.6%でした。ただ、この類似度は言葉の重なりを見るため、同じ業界の事業の言葉や制度の名前が共通しているだけでも高くなります。レポートも、模倣、同じ支援者、規制の文言の共有などの要因は特定しないとしています。
TOPIX100に入っていない会社でも、この記事の見直しの手順は使えますか。
使えます。前年から書き換えなかった文を抜き出し、施策と成果を結ぶ文について、この1年の変化を施策の担当者に確かめる手順は、企業の規模や上場市場を問いません。ただし、ほぼ同文75%や静的45%といった割合はTOPIX100の有価証券報告書の集計で、規模の違う会社が自社の位置を測る基準には使えません。類似度の線の置き方で割合が変わる点にも注意してください。
年次更新の分析の数値は、いつ確定しますか。
類似度は文章から機械的に計算した値で、評定によって変わりません。一方、D4の帯は本文テキストの一次判定をAIが行った暫定値で(企業名・年度は伏せていません)、複数の人による独立の再評定と、評定者間の一致度(信頼性係数κ)の報告をもって確定します。人による評定は、企業名などの表記を伏せたテキストで行う予定です。帯が確定すると、「静的」「深化」などの型の社数や、3年間ほぼ同文で帯も変わらなかった企業の数も変わりえます。

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参考文献

本稿の見方は、次の研究・実務知に多くを負っています。

  1. 株式会社DroR/臨床組織科学研究会(2026)『DOCI 2026 — 人的資本開示の構造分析:施策列挙から、構造設計へ』(PDF・56ページ) 本稿の数値の出典。自社の前年テキストとの類似(ほぼ同文55%→75%、3年間実質同文17社・うち帯0〜1が9社)は図表25(p.25)、全社ペアの平均類似度と同業種・異業種の比較は図表26(p.26)、変化類型と29社の内訳は図表28(p.28)、帯の揺らぎはp.22、要旨はp.3、方法と限界はp.47〜49・p.55。文の単位の比較、線を動かした数え直し、マクネマー検定、フィッシャーの正確検定、業種の名札の付け替えの計算はレポートにはなく、DOCIの集計に使った本文テキストと集計データから本稿で行ったもの。方法の記述のうち、企業名・年度を伏せて評価したとする箇所は改訂予定で、公開ページの記述が最新。 参照日:2026-10-19
  2. DOCI — 人的資本開示の構造分析(年次調査)公開ページ DOCI 2026の要旨・4次元の到達率・方法と限界。AIによる一次判定と人による独立評定の進め方の最新の記述。 参照日:2026-10-19
  3. 株式会社DroR/臨床組織科学研究会(2026)「DOCIの4つの観点で、自社の人的資本開示を点検する確認シート」(PDF・A4 2ページ・CC BY 4.0) 2026年10月8日公開の自己点検用シート。観点4(構造・因果の記述)の帯の目安と記入欄。帯の目安はDOCI 2026の判定基準を自己点検向けに言い換えたもので、DOCIの公式な判定ではない。 参照日:2026-10-19
  4. Yamanaka, M., & Nakamori, M. (2026)「Clinical Organizational Science: An Integrative Framework for Structural Intervention in Complex Organizations」Frontiers in Psychology, 17. DOCIの4次元・帯の設計の理論的な背景となる概念論文(Conceptual Analysis)。効果を実証したものではない。 参照日:2026-09-24

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